「全く・・貴様は相変わらず女に鼻の下を伸ばして・・っ!!」
今や行きつけとも言える店から出てきた瞬間、、悪友兼親友に罵られた。
「何だよー。お前こそ、良いキャバ嬢でも見つけたのか??」
「馬鹿者!!俺は仕事だッ!!」
ふんっとイザークはネクタイを更にきっちりと締める。
相反するモノ同士仲良くなるとは正にこの二人だろう。
「そうだ、イザーク!久々に四人で飲もう!!」
「はぁ?!そう言う話は仕事が終わってから・・」
「あのなぁ、お前と俺じゃ絶対に時間帯合わないだろ?」
やれやれと言うディアッカに、イザークは眉間にしわを寄せ「貴様がだらしのない職をやっているせいだ」とまた怒る。
「まーまー、アスランとキラには連絡しとくからさ。決まったらメールするな。」
「ふん。お前等暇人と違って、俺は忙しいから行けるか分からないがな!」
言うだけ言って・・何処か嬉しそうなイザークに、ディアッカはお前の方が相変わらずだよ、と心で思った。
ヒビキが居なくなって・・もう二週間が過ぎようとしている。
最初は唐突なことで生徒達は驚いていたが、「一応まだ登校拒否ということになっている」と説明した。
生徒達はどうやらヒビキならば学校に戻ってくるだろうと高をくくっているらしく、それ以上詮索はしないでくれる。
だが・・彼女の親友であったミリアリアはどこか腑に落ちない顔でこちらを見上げていた。
「・・・・何だよ、この請求額は・・。」
制服のまま銀行へと入り、今月分の引き落とし額を目の当たりにする。
・・可笑しい、これは絶対に可笑しいッ!!!
モニター画面を叩きそうになるほどむかついた。
自分が通っていた学校は有り得ないほど学費が高い。
・・・つまり、そう。
・・・私はまだ退学にされていないのだ。
怒りのまま電車へ乗り、いつも通っていた学校のある駅で降りる。
丁度・・改札口でミリアリアと鉢合わせた。
「・・制服・・・?・・てっきり・・学校止めたんだと・・。」
唖然とこちらを見たミリィだが・・直ぐにカガリの雰囲気を感じ取る。
「・・・・、今から・・、学校?」
「・・ああ。ちょっとザラ先生に文句つけてくる。」
そう言って・・行こうとした自分をミリィは止めて・・「一緒に行くわ」と言ってくれた。
「・・ヒビキっ!!」
驚いたのはアスランだけではない。他の教職員も・・登校拒否が来たと・・物珍しい様子で見ていた。
「どういうことだよ、ザラ先生ッ!!学費・・落とされたじゃないか!!」
バシンッと大きな音を立てて、カガリは目の前に据わる翡翠のような目を睨みつける。
相手も目を逸らさず・・小さく溜息をついてこちらを見た。
「・・意見は・・変わらないのか?ヒビキ。」
「当たり前だろ・・っ!!先生は・・私が戻ってくるとでも思ってるのかよ!!」
学校に未練がないわけじゃない。
本当なら・・今頃クラスのみんなと楽しく文化祭の準備をしている。
でも・・そんな事言い出したらきりがないじゃないか。
いっぱい、いっぱい、哀しいことはあるけど・・でも、泣いてたら何も出来なくなってしまう。
立ち止まったら駄目なんだ。
シンのために・・・自分の為に。
「・・・・本当に・・止めるのか?」
カガリの叫びで静かになったその場所に、通るようなアスランの声が響く。
カガリはコクンと頷いて・・アスランもそれを見た。
・・・・可哀想に。
目の前の生徒は、今追うべきではないことを背負っている。
本当ならば、同じ年代の人間と・・切磋琢磨して才能や人格を磨き上げている時なのに。
なのに・・この子は、この道を選んだ。
その決断は・・他の者から見れば、立派なモノだったのかも知れない・・けれど。
彼女はもう人と同じレールでは生きていけない。
「・・・此処で学校を辞めれば・・君は中卒扱いだ・・。そんな子を、誰も・・社会は拾ってはくれない。」
アルバイトなら、一生出来るかもしれないが・・・満足に自分を養うことだって・・。
「後の事なんて・・今は、考える余裕無い・・。」
「・・だろうな・・。分かっていたら、学校を辞めるなんて馬鹿げた・・」
「でも!!今は・・」
「それが幼いって言うんだっ!!甘ったれるのもいい加減にしろ!」
職員室の空気が割れる。
あの温厚なアスラン・ザラ教員が、あの明るいカガリ・ヒビキが。
カガリは目にいっぱいの涙を溜めて、教員を睨み、アスランは深く眉間に溝ができ目の前の生徒を怒鳴りつけた。
その空気を壊そうと・・先に動いたのはアスランだった。
「・・五十歩譲って・・退学は良いとして、転入はどこにするんだ?」
眉間の皺を押さえ、アスランは極力優しくカガリに話しかける。
珍しく熱くなってしまった・・。それは、カガリに幼い日の自分を見てしまったからなのかもしれない。
アスランは・・中学の時母を亡くした。
・・当時から父とは絶縁状態。
面倒になって・・学校も休みがちで・・・・・・・辞めたくなった。
けれど、そう言った中、励ましてくれる友達が居た、教師も・・親身になってくれた。
だからこそ今自分は此処にいるのだと思う。
「・・転入・・?」
「ああ・・公立なら学費も安い・・君の頭なら・・」
「・・行かない。」
躊躇うように、だがハッキリとした口調でカガリはアスランを見ていった。
新しい学校に行けば、制服が替わりシンが不審に思うだろう。
自分が公立に言ったことを知れば、シンだって・・お金に気を遣って公立に入ってしまう。
公立が駄目な訳じゃないが・・シンは前々からこの高校に入りたがっていた。
「・・・君は人生を棒に振る気か?」
責めるように・・でも気を遣っていってくれた言葉に、カガリは堪った涙を拭って笑顔を作る。
「・・・棒に振らないように・・頑張ってみる。」
「・・・・そうか・・。」
そう言ったのを最後に、アスランは手続きの書類をカガリへ渡し、カガリもそれにスラスラと文字を書いた。
ミリィは黙ってそれを見届けて・・カガリと共に、職員室から出ていった。
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よし、やっとこれからアスカガです♪今までは前座みたいな・・。
頑張って書きますっ!!アスカガになるのは大分後ですが!!