酷く困惑していた。
そのアレックスの脳に、違う人間の声が響く。
同じ声なのに、自分よりずっと落ち着いたトーンで。
「・・っクソ・・」
『カガリと話がしたい。』
「五月蝿い・・っお前!!」
『今カガリは俺と話したいって言っていた、そうだよな?』
「--------カガリは、俺の・・」
俺だけのものなのに・・っ!!!
「・・アレックス・・?」
-------そう、俺は・・っ
「アスラン・・・?」
・・・・・・・・・・っ
「----カガリ。」
そう落ち着いた口調。アスランだ!とカガリは思う。
そしてガバッと抱き付いて、背を撫でた。
「・・・好きだアスラン・・大好き・・。」
アスランもカガリに手を回し「俺も・・君が好きだ。----好きすぎておかしくなりそうなくらい・・」と付け加える。
「--------君が・・」
「『好きだ』」
心の中の声とアスランの声が被る。
「『好きなんだ・・どうしようもなく』」
ああ・・そうか、
「『俺だけを愛して・・』」
アイツは
「『俺だけを見て・・・』」
--------俺自身なんだ。
自然とキスをしてからアスランはカガリ肩に自分のおでこを付ける。
カガリはそれを受け入れ、アスランの髪を梳いた。
心地よい指。
「・・・?泣いてるのか・・・?」
自分でもよく分からなかった。
でも涙が溢れていた。
カガリは泣いている子供をあやすように、アスランの背中を何度も優しく撫で、カガリとアスランはその場に座り込む。
ごちゃごちゃとアスランの、アレックスの感情が入り乱れているようだった。
嬉しさ、喜び、悲しみ、悔しさ
彼女に向ける愛しさも、あって。
何の感情が表に出てこうなったのか?
今自分はどっちなのか?
-----分からない、分からない、でも。
「カガリ・・」
「・・・?」
そこで、一度アスランの脳はショートした。
フツッと突然、電源が切れたように脳は考えるのを止めてしまったのだ。
急に重たくなるアスランの身体をカガリは抱きとめ、アスランの頭を膝に乗せ優しく撫でた。
「アスラン・・。」
涙は頬を伝っているものの、安らかな表情にカガリはホッとして笑顔になる。
「大好き、なんだからな・・!」
そう小さく呟いて、高い鼻を指でつついてやった。
薄暗く、埃っぽい狭い小部屋。
その中に、自分がいるのに、目の前に自分が居た。
『殺したと思ったのに・・、次はお前が俺を殺すのか?』
そう言って、無理に笑った顔は、酷く滑稽だった。
怯えている顔。憎しみと悲しみと、諦めた、顔。
これが、もう一つの俺。
色欲深くて、自分勝手で、俺を消すことばかり考えて
俺を陥れた、
でも
『「・・・カガリが、愛しいって言ってくれたんだ。」』
そうだ、カガリは
『こんな俺も、愛しいって・・!!!』
懇願するような、縋り付くような叫び声だった。
その通りだった、カガリは
「こんな俺達を、愛しいって言ってくれてるんだ」
だから
「・・カガリが好きな俺を、俺は殺したりしない・・」
「・・俺達は、本来一つだった、・・もどろう?」
『いやだッ!前のお前に、俺の存在なんて・・居場所なんてなかったじゃないか!!』
考えてみれば、そうだった。
カガリにいわれこそしたが、アスラン自身自分が何か抑圧してる感情があるなんて思ってみなかった。
あると言えば、カガリとの婚約が持ち上がる前、キラとどうなんだろうかとか、そう悩んでいた時で・・。
「ああ・・そうか・・・!」
独り合点して、アスランは笑った。
「戻るんじゃない・・。新しい俺達になるんだ・・」
アレックスは、頭に?を浮かべる。
「アレックス・・君は、きっとカガリが好きっていう俺の感情から出来たんだ。・・俺がその感情を持てあましていたから・・」
君になってもなおも余ったカガリへの勝手な愛情が暴走して、俺はカガリに酷いことをしてしまった。
けどきっと、俺のその当時の負の感情はもっと大きくて、それが堪えきれなくて、きっと新しい器に色々な感情を流していたのかも知れない。
あの時から、俺の中には二つのアレックスとアスランがいたんだから。
もう、もとの・・今の”アスラン”には戻れない。
そして、今の”アレックス”にも・・・
俺達は
アレックスは意志の疎通が出来たようで、泣きそうな顔を止め、悪戯っぽく笑う。
ああ、俺ってこんな表情も出来るのか。
アスランは相変わらず落ち着いた笑みで笑い返した。
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本当は二人が話し合うシーンなんてなかったんですが、折角なので、ねw
何かごちゃごちゃ説明したいんですが、言い訳がましいので、みなさまのご想像補完していただけると有り難いですw