「・・・。」
「・・・。」
ぎゅっと額ランの裾を捕まれ・・シンは困ったように、でも嬉しそうに笑う。
その顔に・・・ステラもパァッと明るくなって、一緒に手を繋いで歩き出した。
ステラに両親は居ない。だが、もう大人になった兄が居るそうだ。
切っ掛けはあの日・・シンの両親が死んだ日。
ステラは、親しくないのに葬儀に来ていて、泣いていたシンを見て突如一緒に泣き出した。
「・・シン・・辛い、ステラ、分かる・・。」
舌っ足らずで、少し浮いた感じの不思議子だったステラのイメージは、シンの中で大きく変わった。
その日から・・ずっと、ステラは自分の傍に来てくれるようになった。
「公園、好き。子供・・可愛い。」
お互いお金があるわけじゃないので、いつも同じ公園でシンとステラは他愛のない時間を過ごす。
ステラ曰く、家は酒屋で・・兄が店主らしく、この時間は既に仕込みを始めているので邪魔したくないらしい。
いつものように子供達と戯れるステラが可愛くて、愛しく感じるようになっていた。
・・ステラも、自分と同じだと良いと思う。
「いらっしゃいませ~!あ、ディアッカ!!」
既にファーストネームで接するようになったカガリは子犬のようにディアッカの元へと駆ける。
ディアッカは・・少し、困ったようにカガリを見て・・・後ろを伺う。
「・・・?今日は友達も一緒なのか・・・?」
ちらりと後ろを見た瞬間、この場には不吊り合いすぎるのと・・その相手に、カガリは思わず叫んでいた。
「・・・・・どういうことだ、ヒビキ・・。」
「う"・・。」
店内ではなく・・控え室の方で三人はカガリは嫌と言うほど元副担任に睨まれる。
「・・君がこんな不健全な店で働くなんて・・。」
「先生には関係・・」
「意外を通り越して呆れるしかないな・・。」
「おい、アスラン。そんな言い方ないだろ!」
気遣ったディアッカにすら呆れ、アスランは地より深い溜息を付く。
カガリは、そんな様子のアスランに、水色のスカートを握りしめた。
「・・呆れるなら、呆れろよ。・・私仕事あるから、戻るな。」
休んでいたらその分引かれてしまうとカガリはソファーから立ち上がる。
行こうとしたカガリを、アスランは声で静止させた。
「・・いい加減にするんだ。ヒビキ。・・・後になって、後悔する日が必ず来る。」
「おいおい、アスラン。」
「みんなが勉強しているときに・・一人だけ、例え家のためだと言って、こんな事をして何になる?・・社会に出ても誰も相手にしてくれない。・・君は人生を棒に振っているようなものなんだ。」
ギュッと・・カガリは身体の横で拳を作った。
相手が正論なのは百も承知だ。
自分だって・・・好きで、学校を辞めた訳じゃない。
ちゃんと・・ちゃんと考えて、決めたことだ。
悲劇のヒロインになるつもりなんて無かった。
私は、いつか、ちゃんと・・。
シンの分を稼いで、自分の分も稼いで・・。
大学に・・行って・・。
ちゃんと、夢がある。
人生を棒に振るなんて、思っても言われたくない。
ポタリとカガリの目から涙が零れた。
先生からは見えないだろう・・でも、自分の肩は震えている。
「・・・先生には・・わからない。そう思ってればいい・・。」
分かって貰おう何て思わない。
先生が呆れるのも分かる。
・・・だから、もう。
「仕事の邪魔だけはしないでくれないか。・・・私だって、お金のために必死なんだ。」
キッと憎しみの籠もった目で、カガリはアスランを睨んだ。
アスランはその目に何も言えず・・カガリが出ていくのをただ、見ていた。
「・・お前、あの言い方はないんじゃねーの。」
「だが・・ヒビキは・・」
「あの子が決めた人生に、お前が口出しする権利はもうないだろ?」
ハンッと鼻で笑われ、アスランは眉間にしわを寄せる。
ディアッカは心配性のアスランを見て、少し笑ってから
「あの子が危ない道に行きそうなら・・俺が止める。・・お前の言葉はあの子を傷つけるだけだぜ。」
「・・・。」
ディアッカの言葉は聞き捨てならず、アスランは喰らい面もちでディアッカを見る。
ディアッカは「信用してくれよ。」と軽やかに笑った。
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アスランとカガリの仲が険悪です。まぁ後々ちゃんとなります。
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