「カガリ」
「いらっしゃい!」
日課のように来るようになったアスランにムウは正直に溜息を付く。
仕事前だろうと仕事中だろうと・・アスランはベトベトとカガリにまとわりついていた。
カガリはそれを気にしないかのように笑顔で受け答えている。
人間出来ているというか・・。
単なる天然か・・・。
半ば親の心境でムウはもう一度溜息を付いた。
「カガリ・・今度さ、」
「ん?」
アスランからしてみれば、少し屈辱的なことだ。
こんなにアピールしているのに、彼女は食事にすら誘わない。
・・・彼女の目は節穴か?
「どっか出かけない?」
アスランの言葉に、カガリは「ああ!」と笑顔で返す。
---・・友達、って事なのだろう。彼女にとって自分は。
そう考えると腹がムカムカする。
幼いときからの執着・・・いい加減断ち切りたいが、自分の本能がそうはさせてくれない。
この感情を、最近ではウザく思うくらいだ。
久々にキラと話すか・・いや、でもアイツは・・時々俺を疎んでる節があるからな・・。
コレは事実で、複数の女と寝るというのは彼には有り得ないらしい。
まぁ価値観の違いというヤツだ・・仕方ない。
・・まぁ・・一人の人の話ならアイツでも相談に乗ってくれるか。
そう、アスランは考え・・珍しくキラに連絡をした。
「アスランどうしたの?珍しい。」
インターホンを押すとキラは直ぐに出てきた。
実はと言うか、アスランはこのマンションの最上階から二番目に住んでいる。
「相談・・だ。」
「えー、いくら僕でも複数の女の子から責められたら素直に謝れとしか言えないよ。」
相談事を言ってもないのに勝手に推測され、アスランは「帰る」と背を向ける。
キラはくすっと笑い、そんなぶーたれたアスランに声を掛けた。
「君がわざわざ来るほどの用事なんでしょ?・・良いから相談していきなよ、お茶ぐらい入れるからさ。」
コトン。
小さく音がして、お茶が注がれているコップをアスランは持ち、音を立てて一口飲んだ。
なかなか切り出そうとしないアスランに、キラは思わず笑う。
「・・まだ何も話してない。」
「だって・・あんまり深刻そうだから・・。」
クスクスと堪えるように笑うキラに、アスランは「大したことじゃない」と断ってから切り出す。
「・・・本命が出来た。」
アスランが言った一言に、キラは目が点になってから頭を横に振った。
「そう、なんだ。・・それで・・その子とは・・・?」
キラがまず思ったこと・・。
アスランが好きになる子って・・どんな子。
何故百戦錬磨の彼が、わざわざ自分の所に相談に来るのだろうか・・。
まぁ・・対人関係なら僕の方が世渡り巧いけど・・女の子の話になればアスランは別だ。
「今度、遊ぶ約束をした・・。」
目線を逸らして言うアスランは、緊張してるに他ならない。
問題は、彼ほどの人間が、何故遊ぶ約束でこんなに緊張して自分を訪ねてくるかだ。
「・・・それ・・で?」
「・・どこに行けばいいと思う?」
率直な質問に・・キラは「アスランはどこに行きたいのさ・・?」と訪ねる。
「ホテル。」
そう、即答してしまう相手にキラはなるほど、と彼が悩んだ理由が分かった気がした。
「普通のデートがしたいわけだ。」
「・・・ばれると面倒だから・・今まで、したくなかったんだけどな・・。」
あのアスランでも流石に本命には早く手が回せないらしい。
・・・・良かった。
アスランにも人間としての感情があったんだ。
「・・そっか・・水族館とか・・映画館とかが良いんじゃない?」
「・・・行ったこと無いな・・。」
水族館は魚が好きな訳じゃないし、映画館は退屈で寝るだけだ。
そう告げると・・キラはアスランらしいと言い「彼女はどういうところ好きなの?」と聞かれた。
「・・多分だが・・賑やかなところとか、初めて見るモノがあるところとか・・。」
そういえば、修学旅行や何かの度にカガリは寝付けなくて困っていたっけ・・とアスランは思いだし笑みになる。
そんなカガリのキラキラした顔が大好きで、友達だと思っていた頃からカガリとは違う班になったことはない。
「・・・・その子・・・どんな子??」
単純すぎる疑問をキラはアスランに投げかけた。
だってオカシイ、明日は雪の後に虹が架かるのではないだろうかと心配になる。
あのアスランが、幸せそうに笑ってるんだよ?!
いつも勉強か屁理屈、愚痴・・理不尽な女関係しか話さないアスランが!!
「素直で、天然で・・明るくて・・。」
次々に上げられる特徴にキラは誰かと被るなぁとしみじみ思う。
ただ・・カガリは、アスランのような男は大嫌いだろうけど。
ん・・ってことは・・。
アスランが好きな人だって、カガリと似たような性格なら・・アスランのこと好かないよね・・・?
だって、カガリは女にルーズなのは嫌いで、ましてセックスフレンドが沢山居る男など人間の価値もないと思うだろうし・・。どこに行っても楽しそうに笑うカガリと彼は対照的すぎる。
・・・でも・・ま、同じ人間じゃないしね。
アスランのそう言うところ気にってくれる人もきっと広い世の中にはいるよ。
「ところでさ、その本命の子とは・・付き合ってるの?」
安易な質問だった。そういえば聞いてないとキラが言うとアスランはあからさまに不機嫌な顔をする。
それを見て・・まだなんだ、とキラは小さく呟いた。
「付き合ってたら・・相談何てしない。」
「そっか、そうだよね。」
アスランはキラと話しながら、心が楽しくなったりムカムカしたりの繰り返しだ。
何で俺が悩まなければならない?
カガリが好きだから・・彼女のことを思うと楽しくなるのは分かる。
けれど・・言いようのない、苛々と切なく痛む胸が、さらにアスランを苛立たせる。
大体・・彼女が自分を好きになれば、こんな努力しなくて良いのだ。
今まで、全て女から言い寄られてきた自分にはこんな状況は似合わない。
早く・・・彼女も他の女のようになってしまえばいいと、アスランは深く思った。
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相変わらずアスランがバカです。これでも前よりは成長してます。人に相談するのも前のアスランのプライドなら許しません。
これからちゃんとアスカガになります。正し歪んでます;;;
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