取りあえず部屋に入り、いかがわしい雑誌を広げるキラ。
アスランはもう消えてしまいたい気分でその場にいた。
健全な思春期男子 中編
三人は恥ずかしがりもせず真剣に女の身体について語りだし・・、アスランは居たたまれない気分でそこにいた。
「お前等・・よくそんな生々しい話が出きるな・・・。」
「あのねぇ、重要なんだよ!ゴムは!相手のこと思いやるならちゃんと・・。」
突っ込んだつもりが、避妊についてキラに語られ・・アスランは溜息を付きたくなる。
どうやら色々種類があるらしく、メンソレータム付きとか、イチゴ味だとか・・ぼつぼつした突起付きとか・・。極薄とか。色々あるらしいことは理解した。
いや、こんな事理解する必要はないッ!!とアスランは冷静に頭の隅にそれを追いやる。
だが・・コンコンっというノックで、アスランの思考回路は吹き飛ばされていた。
「キラ、飲み物持ってきたぞ?」
その声にキラはダッシュで雑誌を片づけ、カガリは少し待ってから入ってくる。
「ったく・・何の話してたんだよ。」
「え、えっと・・。」
明らかに目が泳いだキラに、カガリは呆れたように溜息を付いた。
アスランは、カガリの姿に、普通の女子より少し低い声に、鳥肌が立つ。
キラと喋っているのを良いことに・・顔、瞳や唇。身体・・制服から出る太股・・。
それらをまじまじと観察していることに本人は気が付いていない。
その・・熱のある視線に、カガリはフッとアスランを見るが、アスランは目があった瞬間に逸らしていた。
アイツ・・またシカトして。
やっぱ顔のいい男は駄目だな・・と、カガリは勝手に独自の男論をアスランに叩き付ける。
良くあるじゃないか。ホストや・・学校でちょっと持てる男は、大抵彼女が五人ぐらい居る。
そして興味のない女は遊び・・もしくはOutOf眼中だ。
ふん・いいさ。顔が良いだけの男なんて私も興味ないしな。
そう決めつけ・・カガリは部屋から出ていく。
フイッとカガリが背を向けたとき・・舞い上がったスカートからチラリと見えた下着に、アスランは信じられないほど心拍数を上げてしまった。
「・・・お前、会釈ぐらいしろよ。姫さん怒ってたじゃん。」
「・・へ・・?」
「さっきもカガリのことシカトしたでしょ・・。」
「全く、礼儀がない男だ貴様は。」
え・・今・・彼女・・怒っていたのか・・?
ずーんと一気に暗い気分になる。
その姿に・・ディアッカは「もしかして・・」と声を張り上げて言ってしまった。
「お前、姫さんに一目惚れしたのか?!」
な・・っ・・!とアスランは思いっきり立ち上がり、キラとイザークは「図星?!」と逆に焦る。
あのアスランが・・女?!しかも・・相手はカガリ・・・。
「貴様も男だったのか・・。」
「・・不器用すぎるよアスラン・・アレじゃ"嫌いです"って言ってるようなもんだよ・・。」
感嘆するイザークと、同情するキラに見舞われ、アスランはどうしようもなく恥ずかしくなっていた。
仕方ないだろう、一目惚れなんだから・・ッ!!
「あーあ・・だからアスランもちょっとくらい合コン行くべきだって・・言ったのに・・。」
「あの態度じゃなぁ・・。近付こうにも嫌われるのがオチだぜ?」
無意識でやってしまったばっかりに、アスランは何も言えず項垂れる。
そして・・アスランに女の勉強をさせるための会はすぐさまアスランの慰め会へと変わった。
次の日・・アスランは憂鬱だった。
昨日からあのカガリの顔が離れない・・。
何も知らない人間に好意を持ってしまった自分が恨めしい。
・・・・早く忘れてしまえ!あんな女子のことなんて・・ッ。
御陰で寝坊はするし散々だと・・アスランは電車に乗る。
すると・・・次の駅で、彼女が乗ってきていた。
・・・あ・・っ・・!!
思わず顔が晴れたがアスランは直ぐに目をそらす。
それに気が付いたカガリは溜息を付いて、アスランとは反対の長椅子の一角に腰を下ろした。
相手が目を瞑ったのを良いことに・・アスランは、チラリとカガリを何度も見る。
スカート・・・短くないか・・。
そう思った矢先、カガリの首がカクンと動いた。
「・・あ・・。」
ストンと堕ちた先は中年の男の肩。
その人は少し迷惑そうにしたが女の子だと分かると逆に気をよくしたように見え、アスランは怒りを露わにする。
少し年輩の人が来たのを良いことに立ち上がり、気が付いたら彼女を起こしていた。
「ん・・。」
少しだけ開いた口を閉じ・・眠たそうにこちらを見るカガリに、アスランの心臓は早打ちになる。
緊張した面もちのまま・・アスランはいつもより低い声で、相手を制した。
「隣の人、困ってるだろ?」
それでやっと気が付いたのか、カガリはハッとして頭を上げる。
アスランはそんなカガリの動作を見て、可愛いなと頬を緩めた。
だが・・再び彼女と目が合い、顔が強ばる。
「・・・、注意・・ありがとう。・・・----退いてくれないか、私降りるんだ。」
無機質な声だったかもしれないが・・アスランには届かない。
ただ、彼女と言葉を交わせたことだけが、アスランを舞い上がらせていた。
「・・あ、ああ・・。」
退くと・・カガリはこちらを見ずに降りてしまう。
それに寂しさを覚えながら・・・アスランは彼女が座っていた席に座り、なんだか嬉しくなっていた。
「うっわ・・どうしたのアスラン、大丈夫?」
どこか夢心地のアスランの頬をキラはピチピチと叩く。アスランは心ここにあらずで「へ?」とキラを見た。
「どーせ姫さんの夢でも見たんだろ?」
「・・あり得るな。」
そう言われ・・アスランは夢なんかじゃないッ!!と今日の事を皆に言う。
「・・そんなにカガリが気に入ったなら・・僕協力するけど・・・?」
「・・え、で、でも協力って・・。」
急激に弱気になったアスランに・・キラは「今日カガリにもアスランの印象について聞いておくよ」と言ってくれた。
彼氏・彼女なんて・・自分には全く未知だが、とりあえず知り合いか友達になれたらいいと思う。
「よっしゃ・・!やっと男の性に目覚めたアスラン君に、やるよ。コレ。」
そう・・重たいモノを渡され、アスランは瞬時にエロ本とエロ雑誌だと察する。
「何でお前はそう言う話しに・・ッ!」
「全部姫さんだと思って見て見ろ。すっげー欲情すっから。」
そう言われ・・・アスランは有り得ない!と突き返すが逃げられた。
「まぁ・・アスランに限って、手から出すってのは有り得ないし・・流石に勉強した方が良いんじゃない?」
君、その手の授業全部寝てるんでしょ?・・とキラに言われて、アスランはうぅ・・と声を濁らせた。
結局・・家まで持って帰ってしまい、勉強だ・・と自分に言い聞かせ、それを開く。
一番まともそうなのから開くと、避妊や女の人の身体について説明してあった。
ふんふん・・と学び・・次のページに進むと、自己処理のやり方が書いてあり・・アスランは自分でこんな事出来るか?!と激しく拒否反応が出ていた。
ぱらぱらとめくって・・様々な女の人が出てきてアスランは目のやり場に困る。
だが・・一度開いてしまえば、アスランだって健全な男子・・見たい・・という欲望にも駆られた。
そして・・ディアッカの、「カガリだと思え」の一言を思い出し、そちらに目を向ける。
「・・・あ・・。」
・・・カガリが・・こんな、こんな・・・。
イヤらしい格好・・っ・・・。
思わずそれを壁へと投げつけ、アスランは蹲ってしまう。
自分には無理だ・・と、やや半べそをかいていた。
しかし・・いったん想像してしまうと、どんどん・・今まで聞かないように、見ないように・・していたことが、頭に雪崩れ込んできてしまう。
うわわあああ!!と、何度も心で叫んだが、自分に巣くった汚らわしい妄想を消すことは出来なかった。
「・・アスラン?・・ああ・・電車であったヤツ?」
「そうそう、彼格好いいでしょ??カガリ、一目惚れとかしてないかなぁって思って・・。」
その言葉に・・カガリは、はぁと溜息を付く。
「あのな、確かにアイツは格好いいが・・それと恋は別だ。」
それに・・と、カガリは眉間にしわを寄せ声に出す。
「アイツ、いつも私のことシカトしたり睨んだり・・・。今日だって、忠告したら去ればいいものの、私のこと睨みつけてたんだぞ!!質が悪い!!」
フンッと行ってしまうカガリに・・キラは「あちゃー」と掌で頭を抑える。
・・アスランが睨んでるように見えたのは・・・多分、緊張してたせいだとおもうんだけど・・。
そう思い、キラはその後カガリに必死で弁解をしていた。
アスランは小学校から男子校だから・・とか。
女の子に興味なかったから・・とか。
「・・・何で私に言う必要あるんだ?」
「へ・・いや、だって・・。」
・・・アスランが始めて恋したのに、嫌悪されては・・。
「・・・もういいよ。アスランは良い奴なんだろ?分かったから。」
そう・・キラをなだめるように言って・・カガリはキラを部屋から出す。
その頃アスランは・・、欲望には勝てないと知り、純粋に異性やその他事情について学んでいた。
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男の子はこれくらいの方が良いと思う・・。(ヲイ)
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