「カガリ?」
『ん、どうかしたのか?』
試し付き合い・・そう言うとカガリは困った顔をして考え込んでしまった。
真面目なカガリの性格からしてみれば、重大なことなんだろう。
「・・試し・・なんだし、そう気に追うことはないよ。」
「え・・でも・・。」
今告白していたら、俺は確実に振られていたんだろうと感じざる終えない。
・・・振られる・・なんてあって堪るか。
「・・・一ヶ月間・・それでカガリがイヤなら、やめようって言ってくれ。」
「え・・あ。」
「一ヶ月経って・・イヤじゃなかったら、付き合おう。」
「・・わかった・・。」
酷く困った顔をしたカガリが、何か申し訳なさそうにこちらを覗く。
俺はニコリと笑ったが、カガリは目をそらしてしまった。
「カガリの声、聞きたくなっただけ。・・今は休み時間?」
『ああ・・アスランも休憩中か。』
「うん。」
こうやって、カガリと電話できる事が嬉しかった。
別に用件があるわけではない・・声が聞きたいと素直に言っても許される関係。
あの頃からずっと望んでいた。
『じゃあ・・』
「・・あ、ごめん。カガリ、撮影の時間なんだ。」
プチ・・。
相手から電話を切られるというのはイヤだった。
ムカツクから・・。
「・・なんだよ、私も丁度切ろうとしてたのに・・・。」
携帯を閉じカガリも講義に場へと駆け足で急ぐ。
講義を受けている最中・・ふと、自分は凄いことをしているのではないかと思った。
だって・・あのアスラン・ザラだぞ・・。
カガリ自身そう言う目でアスランを見てはいない・・だが、世間の目からはそう映るのだろうと思う。
でも・・だからといって、"好き"と言うわけではない。
大学のキャンパスを歩きながら春から夏へと変わる風を感じる。
つまりはしけっぽいのだが・・・。
アスランは「一ヶ月」と言った。
一ヶ月後・・丁度夏に変わる季節になる。
正直な所・・アスランの事は戸惑っていた。
"試し"で付き合うような人ではなかったはずだ。
ブブッとカガリの携帯が震え、カガリはそちらへと目を向ける。
+今日暇ある?+
当然アスランからのメールで・・今日はバイトの前に時間があった。
+あるぞ。+
そう件名に入れて返すとアスランから駅前で待ち合わせしようと言われ一時に行くことになる。
正直バイトまでの時間は暇でショッピングをしたり、家に帰って仮眠などをしていた時間だ。
時間通り駅に着く、アスランはまだのようだとカガリは柱に寄っかかりながら時計をチラチラと見る。
五分、十分。
時間を間違えたかとカガリはメールを確認し・・あっていると顔を上げた。
自分から約束して遅刻するなよ・・。とか。
もしかしたら仕事が長引いたのかもしれない・・。とか。
「・・・長引いたなら・・連絡、してくれるか。」
「誰が?」
パッと顔を上げるとアスランが居て、カガリはぷぅっとむくれる。
「遅かったな。」
「ああ・・・ごめん、ちょっと。」
実際は近くの本屋で時間を潰していた。
自分が先に待っているのはイヤだったから。
「・・で・・どこ行くんだ?」
「ん・・。どこかでのんびりしたいな・・。」
これは正直な気持ち。・・仕事が六時から入っているので、それまでの間だ休みたかった。
「・・俺の家来ないか?」
「・・・へ・・・?」
家?!
思わず顔を強ばらせたカガリに、アスランはフッと笑う。
「別に・・襲わなよ。」
「ば・・ッ!・・当たり前だッ!!!」
自分の心情を悟られ真っ赤になって反論するカガリが可愛く、アスランの顔は弛む。
その柔らかい顔に・・カガリは少し胸の鳴る音を聞いた。
「行こう。」
そっと腕が背に回されて、カガリは一瞬息を呑み・・目を泳がす。
だが・・横から香る香水で心が和み、そのままの状態で歩き出した。
+++++++++
うーん。アスランが情けなさすぎて切なくなってきたぞ・・。
頑張りますッ!!!あ、でも、ある意味純粋ですよね、アスラン!!
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