結局・・アスランはキラに言われたとおり・・水族館へと彼女を誘った。
勿論アスランは深く帽子を被り、人には見えないようにしている。
「水族館か~久しぶりだっ!」
ニコニコと笑うカガリに目を奪われ、アスランはその顔に見とれる。
いつもいつも、カガリは楽しそうで幸せそうで・・。
昔もだが・・やはりその笑顔を見れただけで、今日来て良かったとも思えた。
「アスラン!エイだ!エイ!!」
知ってるよ・・と心の何処かで思いつつ、はしゃぐカガリの後ろに立つ。
直ぐにマンボウやエビが来て、カガリはそれも笑いながら指さしていた。
・・・・---・・アスラン、笑わないな・・。
魚を見ながら笑っている間だ、アスランは一言も発さないまま、カガリの隣に来る。
帽子が深くて目が見えないせいか、アスランの表情は全く分からない。
・・・昔は、一緒に笑い会ってたのにな・・。
アスランは水族館つまらないのかもしれない・・。
・・でもアスランから誘ってきたってことは、嫌いじゃないんだよな・・・?
うーんと突然笑うのを止めたカガリに、アスランは「どうした?」と水族館に来て始めて声を出した。
「いや・・、アスラン・・楽しいか?」
「・・楽しいけど?」
「・・その割には笑わないな・・。」
覗き込んだアスランの翡翠の瞳はどこか客観的に遠くを見ていた。
・・・やっぱり、恐いな・・。
パッと目をそらしたカガリをアスランは後ろから付いていく。
「そうだ、昼ご飯ここで食べよう!レストラン三つあるけど・・どこがいい?」
アスランの隣りに並びパンフレットを見せる。
和食・・海の素材をふんだんに使った寿司。
ナポリ・・新鮮な魚介類のパスタ
中華・・本場中国の海鮮料理。
「・・どれも一緒だろ。」
何気なく言った言葉だが、カガリにはそれが無関心以外の何物にも見えなかった。
やっぱり・・再会したアスランは言葉の何処かしらに棘があるような気がする。
いや・・昔からだが・・アスランは何でも自分に選ばせてくれる優しさがあった。
・・・・・今回もきっとそれが言いたいだけだろう。
アスランの言葉を会えてポジティブに受け止め直し、カガリは「私パスタがいいぞ!」と言えばアスランは「そう」と一言もらし歩き出す。
「わ、美味しそうッ!!」
はしゃぐように食べ出すカガリに、アスランは自然と頬が弛んだ。
パッと・・カガリは顔を上げ、アスランのその自然の笑みにドキッとする。
「・・美味しい?」
「え・・あ、ああ・・。」
少し赤くなった頬を見せないように、また食べ出す。
アスランはそのカガリを見て、優しく目を細めてから自分の分を食べ始めた。
今の不意打ちの笑顔は何だろうか・・。
目や言葉と裏腹すぎるその笑みは、何処か昔のアスランで・・カガリは懐かしい気持ちでいっぱいになる。
ここだけの話し・・高校に入って直ぐ・・。どこにもいるはずのないアスランを何度もクラスで探した。
そしてハッと・・自分はあの頃アスランが好きだったんだと気が付いたのだ。
でも・・あの頃も今もだが・・アスランは私に釣り合わないから・・。
昔から大人で、優しかったアスラン。
今は夢を叶え、生きているアスラン。
・・・やっぱ、釣り合わないよな。
「カガリ。」
・・・手っ取り早く、会う理由が欲しかった。
「・・俺と試しで付き合わない?」
「うわ!カガリ、どうしたの???」
「・・キラァ・・っ!!」
泣きそうに飛び込んできたカガリに、キラは焦ってその身体を抱きとめる。
中にはラクスも居て・・カガリは二人に悩みを聞いて貰うことにした。
「「試し付き合い?!」」
「ああ・・。」
カガリだって・・数度付き合ったことはある・・だが、どれも友達以上には思えず振ってしまった。
・・その時の相手の切なそうな顔は・・今でも頭を離れないし、申し訳なく思う。
「・・どんな人?」
「・・優しくて・・大人の・・人だとおもう・・。」
「・・・?おもう・・とは?」
ラクスがほんわかと質問すれば、カガリは事情を説明する。
中学までずっと一緒で・・高校に入ったとき別れて、つい最近再会したと。
「でも・・何か、今は・・恐い雰囲気なんだ・・。昔みたいに優しくないって言うか・・。」
「・・不良とか言ったら、僕怒るよ??」
「いや・・っ・・ちゃんとした人だ!」
断り切れず、頷いてしまった。
でも・・嫌いな訳じゃないし・・・・・、もしかしたら昔のようになれるかもしれないと思ったのも真実だ。
「でも・・こんな中途半端な気持ちで・・引き受けて、なんか相手に申し訳なくて・・。」
見る見る泣きそうになるカガリに、ラクスは「あの人にも見習って欲しい精神ですわ」と小さく呟く。
無論それはアスランで・・。やはりこの二人は対局に居るんだとキラは思った。
そして・・ラクスはまた小さく「優しいところはそっくりですのね。」とキラを見て微笑む。
「相手が言ってきたことなんだし・・良いと思うよ?・・問題は、本当に付き合うのかって時ちゃんとはいかいいえ言えば良いんだし。」
「・・うん・・・・。」
「カガリさん、自分の気持ちに正直になるのも時には相手のためになるのです。・・今はゆっくり考えて、しかるべき時ちゃんと答えをだせばよいのですよ。」
そう二人に優しく諭され、カガリはコクンと頷いた。
涙の伝った頬をラクスは優しくハンカチで拭う。
「ごめん・・ありがとう。また相談に来るな!」
そうして去っていくカガリに、キラは少し心配なき持ちになる。
そんなキラを見てラクスは優しく微笑み隣りに立った。
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キラとラクスは二人の相談役です;;この二人は人間出来てます。